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マルセル・プルーストを巡る旅 – 1

「ノルマンディの旅」の最終目的地は、カブール(Cabourg)。今回の旅の目的は2つあり、一つは「印象派を巡る旅」もう一つは「マルセル・プルーストを巡る旅」でした。フランスの作家マルセル・プルースト(1871-1922)は「失われた時を求めて」の中で、バルベック(Balbec)という架空の土地を舞台の一つとして描いています。このバルベックのモデルとなった土地がカブールで、実際に小説の中で記述されているグランドホテルは、カブールのグランドホテルのことで、プルーストは数年の間毎年夏に訪れていたそうです。

(ここでおことわりしておかないといけないことがありました。私は「失われた時を求めて」は現在も購読中で、私の知識は、抄訳版、プルースト関係の本、「失われた時を求めて」関係の本、画集、写真集、映画、そして主人からのインプットによるものです。)

実は私たちの「マルセル・プルーストを巡る旅」は第2弾で、10年にすでにスタートしていました。10年前は、小説の中で重要な舞台、コンブレーのモデルとなっているイリエ・コンブレー(シャルトルの大聖堂の近く)のプルースト記念館を訪問し、プルーストが眠るペールラシェーズの墓地へお墓参りにも行きました。この墓地には、ショパン、アポリネール、オスカー・ワイルド、ピアフなど著名人が大勢眠っています。

おそらく主人は、次はバルベックと考えていたのだと思います。一方、私の一番好きな映画監督はルキノ・ヴィスコンティ。ずいぶん前に、一冊の本と出合いました。それは、なんとヴィスコンティ監督がプルースト作品の映画化のために完成させていたシナリオでした。この本、ハードカバーを持っていたにもかかわらず、今手元に残っているのは文庫本のみ。ヴィスコンティ監督はロケ・ハンも終えていたそうです。下の画像の上に置かれた紺色の本はオリジナルテキスト(フランス語)で、下の右側は日本語訳(ちくま文庫版)、左側は、ロケ・ハンの写真集です。文庫本に写っているのは、カブールのグランドホテルと、衣装担当のピエロ・トージのデザイン。衣装も決まっていたのですね。

シーン・1 田園。屋外。昼。夏。

バルベックに向う小さな汽車が、陽の照った田園の中を、進んで行く。黒煙を高く棚び、かせながら、ゆっくりと―苦しそうに―進む、このc小さな汽車以外には、生きものの気配は全くない。(上記ちくま文庫、大條成昭訳)

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想定していた配役は、マルセル(実際に小説の中では、「わたし」)にアラン・ドロン、モレルにヘルムート・バーガー、オリアーヌ・ド・ゲルマントにシルヴァーナ・マンガーノ、シャルリュス男爵にマーロン・ブランドまたはローレンス・オリヴィエ、アルベルチーヌにシャルロット・ランプリング、ナポリ女王にグレタ・ガルボ。時間を戻せるものなら、この時代に戻って、ヴィスコンティ監督の寿命をあと数年伸ばしてもらって、映画を完成させて欲しかった、、、

プルーストの作品は2つ映画化されています。「スワンの恋」と「見出された時」。この映画しかないのでDVDも持っていますが、もしヴィスコンティ監督の映画化が完成されていたら、比較されてしまって気の毒だったと思います。

長くなってしまいましたので、次回に続けます。下の画像は、海側から眺めたグランドホテル。

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2016-10-21 | Posted in gallery, , 日々のことNo Comments » 
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