マルセル・プルーストを巡る旅 – 2

シーン・6 バルベック・プラージュのグランド・ホテルの屋外。午後。

薄手の絹地の服を、エレガントに着こなした、ブロンドの、背が高く、ほっそりとした青年。それがロベール・ド・サン=ルーである。一見して、きざな感じである。モノクルをかけているのは、必要からよりも、紐のはしで、それを握りまわすことを愉しみたいからだ。

テラスに腰を下ろしたマルセルは、ホテルに入って来て、そばを通りすぎるこの青年の様子をうかがっている。(ヴィスコンティシナリオより)

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宿泊した部屋は海側のバルコニー付きにしました。

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バルコニーからの風景。

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プルーストが実際に宿泊した部屋は当時のインテリアを再現しているそうです。

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ヴィスコンティの映画は幻で終わりましたが、ラウル・ルイス監督作品「見出された時」にはこのホテルが登場します。

「プルーストを巡るノルマンディの旅」はこれで終わりですが、「プルーストを巡る旅」はパリへ。ノルマンディの旅はあと1回で終わります。

2016-10-23 | Posted in gallery, , 日々のことNo Comments » 

 

マルセル・プルーストを巡る旅 – 1

「ノルマンディの旅」の最終目的地は、カブール(Cabourg)。今回の旅の目的は2つあり、一つは「印象派を巡る旅」もう一つは「マルセル・プルーストを巡る旅」でした。フランスの作家マルセル・プルースト(1871-1922)は「失われた時を求めて」の中で、バルベック(Balbec)という架空の土地を舞台の一つとして描いています。このバルベックのモデルとなった土地がカブールで、実際に小説の中で記述されているグランドホテルは、カブールのグランドホテルのことで、プルーストは数年の間毎年夏に訪れていたそうです。

(ここでおことわりしておかないといけないことがありました。私は「失われた時を求めて」は現在も購読中で、私の知識は、抄訳版、プルースト関係の本、「失われた時を求めて」関係の本、画集、写真集、映画、そして主人からのインプットによるものです。)

実は私たちの「マルセル・プルーストを巡る旅」は第2弾で、10年にすでにスタートしていました。10年前は、小説の中で重要な舞台、コンブレーのモデルとなっているイリエ・コンブレー(シャルトルの大聖堂の近く)のプルースト記念館を訪問し、プルーストが眠るペールラシェーズの墓地へお墓参りにも行きました。この墓地には、ショパン、アポリネール、オスカー・ワイルド、ピアフなど著名人が大勢眠っています。

おそらく主人は、次はバルベックと考えていたのだと思います。一方、私の一番好きな映画監督はルキノ・ヴィスコンティ。ずいぶん前に、一冊の本と出合いました。それは、なんとヴィスコンティ監督がプルースト作品の映画化のために完成させていたシナリオでした。この本、ハードカバーを持っていたにもかかわらず、今手元に残っているのは文庫本のみ。ヴィスコンティ監督はロケ・ハンも終えていたそうです。下の画像の上に置かれた紺色の本はオリジナルテキスト(フランス語)で、下の右側は日本語訳(ちくま文庫版)、左側は、ロケ・ハンの写真集です。文庫本に写っているのは、カブールのグランドホテルと、衣装担当のピエロ・トージのデザイン。衣装も決まっていたのですね。

シーン・1 田園。屋外。昼。夏。

バルベックに向う小さな汽車が、陽の照った田園の中を、進んで行く。黒煙を高く棚び、かせながら、ゆっくりと―苦しそうに―進む、このc小さな汽車以外には、生きものの気配は全くない。(上記ちくま文庫、大條成昭訳)

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想定していた配役は、マルセル(実際に小説の中では、「わたし」)にアラン・ドロン、モレルにヘルムート・バーガー、オリアーヌ・ド・ゲルマントにシルヴァーナ・マンガーノ、シャルリュス男爵にマーロン・ブランドまたはローレンス・オリヴィエ、アルベルチーヌにシャルロット・ランプリング、ナポリ女王にグレタ・ガルボ。時間を戻せるものなら、この時代に戻って、ヴィスコンティ監督の寿命をあと数年伸ばしてもらって、映画を完成させて欲しかった、、、

プルーストの作品は2つ映画化されています。「スワンの恋」と「見出された時」。この映画しかないのでDVDも持っていますが、もしヴィスコンティ監督の映画化が完成されていたら、比較されてしまって気の毒だったと思います。

長くなってしまいましたので、次回に続けます。下の画像は、海側から眺めたグランドホテル。

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2016-10-21 | Posted in gallery, , 日々のことNo Comments » 

 

ノルマンディの家

ノルマンディの旅もそろそろ終わりに近づいてきました。ル・アーブルから今回の旅のもう一つのテーマであるCabourg(カブール)へ。カブールのお話の前に、主人の友人ご夫妻と一緒に尋ねたノルマンディ在住のお友達の家のことを書いておこうと思います。

カブールから車で2,30分ののどかな村の中の家。この家はもともとご主人のお祖母様が住んでいらしたそうです。亡くなられて、建物の外観は修復しつつそのまま残し、内部をリノベーションされたとのこと。当時はパリに住んでいて、毎週のように通ってリノベーションされたそうです。

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隣は牧場。馬がいました。

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家の中を見せてもらいましたが、居心地のよさそうなリビング、寝室、使いやすそうな広いキッチン。

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素敵だったのは、屋根裏のゲストルーム。

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ここにホームステイしたい!

奥様はとても感じの良い方で、お料理を作るところを見せてもらったり、レシピを説明してもらったり。私は一般の家庭で実際に使われているお鍋や調味料にも興味があったので、とても楽しい時間でした。フランス語と英語がちゃんぽんでも、お料理のことだと何となく話はわかるものですね。砂肝のサラダがとても美味しかったので、今度作ってみようと思います。

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ラズベリー色のエプロンとコンフィチュールをお土産にいただきました。

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旅に出て、実際にその土地に住んでいる方のご自宅を訪問するのは、とても楽しく、レストランでの食事が続く中、家庭料理をご馳走になると、心も胃もほっとします。そう、ほっとするようなあたたかいおもてなしを受けたからだと思います。

2016-10-17 | Posted in gallery, , 日々のことNo Comments » 

 

Étretat(エトルタ)とDieppe(ディエップ)

ル・アーブル滞在中に、エトルタとディエップに日帰りで行きました。エトルタは、ブーダン、クールベ、モネが描いた「風雨にさらされて自然にできたアーチ型の断崖」で有名な地です。また、この不思議が形の断崖の近くには、針岩があり、これはモーリス・ルブランの小説「奇巌城(L’Aiguille creuse)」の舞台となっています。

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モネの絵とここからの風景だと示すボード。

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断崖の上に登ることもできます。途中休憩してしまった私。5キロ減量しなくてはと思いました。

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断崖の上からの風景。山でも丘でも城でもタワーでも登るのは大変だけど、上からの風景は素晴らしいですね。

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崖の上の教会。教会の裏には駐車場がありました。車でも上がって来れたのでした。

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エトルタは小さな街で、駐車場も少ないので、街に近づいたらどこか空いている駐車場に入れて歩いたほうが良いということでした。到着したときよりどんどんお天気が良くなり、観光客、海で遊ぶ人が増えてきてビーチも結構にぎわっていました。

エトルタはモーリス・ルブランが住んでいた邸宅があり(ルブランはルーアンの生まれ)、「モーリス・ルブラン博物館(ルパンの隠れ家)」として公開されています。

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私は小学生の頃から推理小説が大好きだったので、もちろんルパンシリーズもほとんど読みましたが、すっかり忘れています。当時読んだのは子供向けの本なので、また読んでみようかなと思っています。

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博物館の中は撮影禁止でした。オーディオガイド(英語かフランス語)はルパンを演じたフランスの俳優さん。なかなか面白いツァーでした。庭にはバラが咲いていて、とても素敵でした。さすがエレガントなルパンの隠れ家。

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エトルタでランチ(ムール貝が美味しかった!)をして、ディエップに向かいました。ディエップは海沿いの観光地で、ここのホテルで主人の友人の息子さんがインターンとして勤務しているので会いに行きました。

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彼に案内されて(途中フランス語レッスンを受けながら)、海辺へ。国際凧揚げ大会が開催されていました。

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エトルタからディエップは結構時間がかかってしまい、なんとルーターやiPhoneのバッテリーがかなり危険な状況になり、途中カフェで充電させてもらいました。エトルタを出る頃には日没の時間になり、まさに印象派の海、空の風景となりました。それはとても美しかったのですが、途中高速が渋滞となったり、ディエップに泊まればよかったと思ったほどでした。

ル・アーブルに泊まるより、エトルタに泊まって、朝や夕暮れの海を眺めるのもよかったなとちょっと後悔しました。

2016-10-17 | Posted in gallery, , 日々のことNo Comments » 

 

ユネスコ世界遺産の都市 Le Havre(ル・アーブル)へ

美しい小さな村をあとにして、次に向かったのはLe Havre(ル・アーブル)でした。ル・アーブルは最初に滞在したオンフルールの対岸の都市で、オンフルールからノルマンディ橋(斜張橋、吊り橋で、日本の多々羅大橋と姉妹橋)を渡って行くことが出来ます。ル・アーブルは第二次世界大戦中、ドイツ軍に占領されていたため、連合国軍による爆撃で中心地街は廃墟となり、戦後、オーギュスト・ペレにより大規模な都市再建が行われ、ユネスコの世界遺産として登録されています。

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対岸のオンフルールの古い町並みをは全く違う建物、整然と整備された道路を見ると、どれほどこの街が破壊されたのかと、、、。

ホテルにチェックインして、海のほうへ5分ぐらい歩き、アンドレ・マルロー美術館に行きました。この美術館は、作家アンドレ・マルロー(André Malraux)が文相時代にル・アーブル美術館をベースに、第二次世界大戦の深い傷跡の残るル・アーヴルの町に、文化センターを兼ねた美術館をオープンすることを決定したとのこと。パリやルーアン、オンフルールで訪れた美術館と違って、建物自体も大変モダンな建築となっていました。

寄贈、購入によって、マルロー美術館はフランス第二の印象派コレクションを有する美術館になったとのことです。ル・アーブルは、モネの「印象 – 日の出」誕生の街であり、マルロー美術館のすぐ近くがモネが描いた場所なのですが、あの絵の面影はありませんでした。

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タイミングよく、ブーダン展が開催されていました。

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この美術館では、ドラクロワ(Eugène Delacroix)、クールベ(Gustave Courbet)、ルノワール(Pierre-Auguste Renoir)、モネ(Claude Monet)、ボナール(Pierre Bonnard)、シスレー(Alfred Sisley)、マルケ(Albert Marquet)、マティス(Henri Matisse)などの作品を観ることが出来ます。

ル・アーブルには2泊しました。宿泊したホテルはサン・ジョセフ教会のすぐ近くでした。この教会もオーギュスト・ペレによるもの。

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2016-10-15 | Posted in gallery, , 日々のことNo Comments » 

 

Beuvron-en-Auge – フランスの最も美しい村のひとつへ

「フランスの美しい村」の写真集を見て以来、いつか美しい村の一つに行ってみたいと思っていました。ノルマンディへの旅を決めて、ノルマンディ特集の雑誌を見ていたら、Beuvron-en-Auge  (ブブロン アン オージュ)が出ていました。もし時間があれば行ってみたいと思って、その雑誌の切り抜きを持って旅に出かけました。オーベルジュでの2泊3日の滞在の次の目的地(宿泊地)はル・アーブルでした。オーベルジュからル・アーブルは近いので、その前にブブロン アン オージュに寄ってみることにしました。駐車場とインフォメーションセンターから村への入り口。

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雑誌に載っていたクレープ屋さんやお土産物やさん。

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ランチに素朴なガレットを食べました。もちろんシードルも。

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インフォメーションセンターに来ていたツーリストが、村のマップを欲しいと言っていましたが、15分で回れてしまう小さな村なのでマップはありませんという答えでした。

カルバドス、コンフィチュールなどを売っていたお店。年配のマダムが素敵でした。写真撮られせてもらえばよかったのに。

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フランスの最も美しい村協会 http://www.les-plus-beaux-villages-de-france.org/fr

Beuvron-en-Auge  http://www.les-plus-beaux-villages-de-france.org/en/beuvron-en-auge

2016-10-14 | Posted in gallery, , 日々のことNo Comments » 

 

オーベルジュ2日目は中庭でディナー

オーベルジュ滞在2日目、夕方になって中庭から音が聞こえてきたので、窓から見下ろしてみると、中庭にテーブルがセットされていました。気候も良いので、希望すれば中庭でディナーが出来るようです。ディナーは、前菜、メイン、デザート選ぶことが出来るのですが、どれも美味しそうでとても悩みました。

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主人は前日の前菜で選んだカキがとても気に入って2日目もカキ。生ガキと火を通したものとどちらがいいかと聞かれて、生ガキはオンフルールでたくさん食べたので、少し火を通したものをリクエストしたら、と~っても美味しかったのです。明るかった庭もだんだんと暗くなってきました。

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メインは舌平目に。

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このお野菜の蒸し煮は舌平目に添えられていたのですが、野菜たっぷりで幸せな気持ちになりました(野菜好き)。じゃがいも、にんじん、玉ねぎ、ズッキーニ、インゲンと普通に手に入る食材なので、家でも出来そう。Staubのお鍋で作ったのかなぁと想像してしまいました。

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デザートの前に、カマンベールチーズを焼いたものが出てきましたが、これもとても美味しかったです。今度家でもやってみようと思います。写真も撮りましたが、暗くて美味しそうに映っていなかったので省略します。ハーブ野菜が添えられていました。

このオーベルジュについてはまだお伝えしたいこともありますが、もう10月も中旬になってしまったので、先を急ぐことにします。

2016-10-13 | Posted in gallery, , 日々のことNo Comments » 

 

オーベルジュの朝

オーベルジュで過ごした3日間(2泊3日)はとても良いお天気でした。すがすがしい朝の光と空気。

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食事はすべて1階のダイニングルームで。

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朝食の準備中の朝担当のマダム。

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パンも数種類あり、自分でカットします。私はこのまま食べましたが、トースターもありました。

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真ん中のステンレス製のゆで卵調理器具で好みの固さに自分でゆで卵を作ります。旅から戻り、我が家はゆで卵ブームです。

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ソーセージ、ハム、チーズなども自分で好きなようにカット。

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ジュースも3種類、コンフィチュール数種類、バター、紅茶、コーヒー、シリアル、ヨーグルト、ドライフルーツなども自分で選びます。

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紅茶はマリアージュのティーバッグが数種類置いてありました。ノルマンディはリンゴの土地なので、どのホテルでも必ずおいしいリンゴジュースを飲むことが出来ました。私はリンゴが好きなので、ついついたくさん飲んでしまいました。

朝ご飯が充実していると、今日は良い日になるかなと思えます。食器やカトラリーは、とてもシンプルで素敵でした。

食事後外に出てみたら、真っ青な空。

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2016-10-08 | Posted in gallery, , 日々のことNo Comments » 

 

小さな村のオーベルジュ

auberge(オーベルジュ)は、フランスが発祥国でおいしいお料理を堪能できる宿泊施設付きのレストランです。時々雑誌などで見て、いつかフランスの地方へ行ってオーベルジュに泊まってみたいと思っていました。フランスのガイドブックを見ていたら、ノルマンディにもお勧めオーベルジュがいくつか載っていて、オンフルールから近いオーベルジュがとても良さそうだったので予約しました。

 

きれいに手入れされた中庭があって、メインの建物は1階にダイニングルームと新聞、雑誌などが置いてある部屋があり、2階、3階が宿泊客の部屋、他に2つ宿泊客用の建物があります(客室総数15)。とても評判がよく、人気のオーベルジュのようで、フランス国内各地から、イギリスやドイツからの宿泊客もいました。アジアからは私たちだけでした。

ここは小さな村で、レストランどころかカフェもないし、観光するようなところも何もありません。地元の人の家、農家、村役場、教会があるだけ(少し車で走ればゴルフ場がありました)。ここに滞在した3日間は、中庭や部屋で本を読んだり、付近を散歩したりするぐらいで、のんびり過ごしました。

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とても素敵なところでしたので、朝食、ディナーのことなど、次回にご紹介したいと思います。

 

 

 

2016-10-03 | Posted in gallery, , 日々のことNo Comments » 

 

大聖堂と美術館 – Rouen(ルーアン)

クロード・モネの連作ルーアン大聖堂は33点あるそうです。実際のルーアン大聖堂、ルーアン美術館にあるモネの絵を観に、ドーヴィルで車を借りた後、ルーアンに行きました。

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大きくて、全体を撮るのは私のカメラでは無理でした。大聖堂の中、当然のことながら荘厳な雰囲気。

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ルーアンは、ジャンヌ・ダルクが火刑に処せられた地でもあり、その跡地にはジャンヌダルク教会が建てられています。

ルーアン美術館は、フランス第二の印象派のコレクションを誇る美術館で、丁度、モネ、マネ、ルノアール、モリゾ展を開催していました。

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このポスターの絵、マネ作『すみれの花束をつけたベルト・モリゾ』も展示されていました。通常はオルセーにあるので、ルーアンに来なかったら今回見ることが出来なかったわけで、とてもラッキーでした。この絵は以前オルセーでも見て、何年か前に日本にも来たことがあるので、今回3回目。

そして待望のモネ作、ルーアン大聖堂。

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この美術館は大変素晴らしい美術館でした。パリだけでなく、地方都市にもこのように素晴らしい美術館があり、相当な作品が常時展示されていることにさすが芸術の国だと納得しました。

 

 

2016-10-01 | Posted in gallery, , 日々のことNo Comments »